「無添加なら安心」は短絡的すぎるということを知らしめた腐敗マフィン事件。
この事件は、添加物は「積極的に使うべき」とは言えないけれど「適切に使った方が安全なこともある」という認識を広げた事案となりました。まとめてみます。
デスマフィン事件の概要
通称「デスマフィン事件」は、2023年11月11日と12日の二日間に渡って東京ビックサイトで開催されたアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ」で販売されていた、とある無添加手作りマフィンを食べた人が腹痛や吐き気・嘔吐、下痢などの症状を体調不良を訴えた他に、「納豆の匂い」の異臭や「糸が引く」様子などが次々と報告された食中毒事件です。「デスマフィン」(死のマフィン)(殺人マフィン)というキーワードはX(Twitter)でトレンド入りを果たしました。殺害予告事件にまで発展した大事件です。
マフィンの売り文句(キャッチコピー)
問題となった販売店のマフィンは、防腐剤不使用・添加物不使用、防腐効果のある砂糖も市販の焼き菓子の半分以下でヘルシーなことをウリにして「離乳食完了期のお子様より安心してお召し上がりになれます」と謳っていた、いわゆる「意識高い系」の焼き菓子です。
販売店側の主張が嘘か本当かは私たちが判断することではありませんので、ここでは深く追求しません。保健所などの然るべき機関がキチンと検査して検証してくれると思います。
悪者にされやすい砂糖も、使えばメリットになる側面があります。砂糖は単に食品を甘くするだけではありません。砂糖が水分を多く抱え込んでくれるため、細菌が好む水分が減り細菌増殖を抑えるのに役立ちます。デスマフィン騒動で問題になった商品は、砂糖を市販品の半分以下に抑えて作られていましたが、これも微生物を増殖させる原因のひとつになってしまいました。
マフィンの製造・保管の衛生環境に問題あり?
「焼きたて」を謳っていたはずのマフィンが実は常温で5日間保管されていた(※販売者側は「冷房をつけた部屋で18度以下で保管していた」と説明した)ことも大炎上を招きました。
通常、多くの微生物は10度から40度で活発に増殖するため、18度では保管条件として不十分なのです。そして、問題のマフィンは、焼きが甘そうに見えることも指摘されていました。生焼け状態で生き残った細菌が(冷えて細菌の好む温度に落ち着いた後に)一気に増殖したのではないかと言われています。
デスマフィンの危険度はMAXのクラス1
今回のマフィンは厚生労働省のリコール情報にも掲載されていて、健康への危険性の程度を示す三段階評価では一番危険な「CLASS 1(クラス1)」に指定されています。クラス1は「重篤な健康被害」または「死亡の原因」の可能性が高いもので、これは「ボツリヌス菌」や「フグ毒」と同等に値します。
マフィンの販売店は、2023年11月14日に厚生労働省に自主回収の届出をしており、リコール情報が公開されています。対象はデザフェスのvol58出店ブースで販売した約3000個の焼き菓子(①栗マフィン502個②スイートポテトマフィン537個③焼きりんごマフィン502個④チョコチップマフィン502個⑤ミルクティーマフィン358個⑥ベーコンとクリームチーズマフィン502個⑦ざくろマフィン35個⑧ブルーベリーマフィン35個⑨チェリーマフィン35個)です。(※リコール情報は消費者庁のサイトでも公表されています)
2023年11月20日までで自主回収は終了しているため、今後は購入者の方で廃棄していただき、リコール情報記載の連絡先(メールアドレス)にご連絡ください。
気になる回収状況は、破棄された分も含めて、11月20日時点で
だそうです。(現在は回収終了)
なお、この事件は、2023年11月15日の16時過ぎに保健所の立ち入り検査を実施したとの報道が出ました。
販売店のX(Twitter)では14日時点の投稿で「明日保健所に相談する」とあるため、15日になってから保健所に連絡が行ったと思うのですが、その当日に保健所が立ち入り検査していることからも事件の重大性がうかがえます。
マフィンの自主回収方法にも問題あり?
デスマフィン騒動は、自主回収方法についても炎上騒ぎがありました。
自主回収と返金対応が始まったとき、当初、お店側が返送方法としてレターパックを指定した&返金方法がPayPay一択だったため、さらなる問題を生んでしまいました。
郵便局は「毒劇物等の危険物」を”レターパックで送ることが出来ないもの”に指定していますが、腐敗マフィンは「毒劇物にあたるのではないか?」という議論が巻き起こったくらいです。ちなみに、毒劇物とは「毒物及び劇物取締法」によって規定されるものを指すため、腐敗マフィンは「毒物及び劇物取締法」が規制する毒劇物ではないと指摘する人もいます。
また、郵便局は「なまもの」も”レターパックで送ることが出来ないもの”に指定していますが、焼いた「マフィンはなまものにあたるのかどうか」の論争も巻き起こりました。これについては「常温保存できるかどうか」がひとつの指標になりそうです。
後々になって販売者が「レターパック代も合わせて返金します」と弁明していましたが、返送方法に(送料が一番抑えられる)レターパックを指定したことを指して「ケチっている」と再炎上しました。
そもそも、腐敗したマフィンを密閉が不十分な状態で送ると、ニオイなどが漏れて他の郵便物に甚大な悪影響を及ぼしそうなため「レターパックは腐敗マフィンの自主回収には不向き」という声もあります。(他の人からすれば、郵便物にニオイが移って納豆臭がしたら郵便局へのクレームにつながりかねませんからね!)
対応が二転三転したことも、炎上に寄与したと思います。最初から弁護士を入れて真摯に対応していたらここまで酷い大炎上にはならなかったんじゃないかな?と思います。
返金条件でも炎上
現金購入でレシートや領収書などの類を発行していなかったそうなのですが、購入したことを証明しないと返金を受けられないということで、既にマフィン現物を破棄してしまった人から批難が殺到しました。
せめて「現物を破棄する前に写真を撮ってください」などの呼びかけを行っていたら、結果は少し変わったような気がします。
SNS全削除で延焼
SNSアカウントを削除して連絡窓口を閉ざしてしまったことにより、再度炎上しています。
2023年11月20日夜、SNSが利用できなくなり、その後アカウントが削除されました。
Xとインスタのアカウントが消えたタイミングがほぼ同時だったため、「凍結」ではなく「意図的な削除」だと批判を集めました。被害者の中には「逃げて返金に応じないつもりかも」と不安を募らせる方もいらっしゃいました。
また、Google掲載のビジネス情報でもステータスが「閉業」。つまり廃業に。
さらに、「厚生労働省が自主回収の連絡先となっている電話番号にかけても誰も出ないため、問題となっている」というニュースが流れました。報道では、目黒区保健所の担当者が確認作業中とのことでした。(アカウントの復旧や再開を要望したとのことでした)
お詫び文章が内容不適切で再び炎上
2023年11月21日付で「お詫びとご案内」という文章が出されましたが、冒頭が「拝啓 時下いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます」という書き出しで始まっていたことから更なる炎上を招いています。(※文章はリコールサイトで公表されているお店のホームページにアクセスすると読めます)
「清祥~」とは「相手が健康で幸せに暮らしていること」。「慶ぶ」は「喜ぶ」。つまり、「健やかでなにより」といった意味を持つあいさつ文であるため、今回、マフィンで健康被害を受けた人に対して全く配慮のない「ケンカ売ってると思われても仕方ない」態度だと批判が殺到しています。印象最悪です。。。
さらに読み進めると、「正確な原因は未だ判明しておりません」という文言が出てくるのですが、これに対しても怒りの声を上げる人々が続出しました。
全く無関係なイベントにも飛び火
デスマフィン騒動は、デザフェスとは全く無関係のイベントや焼き菓子販売店にも影響を及ぼしてしまっています。とばっちり、可哀そう。。。
詐欺マフィン・ゲスマフィンに進化
デスマフィン屋に新展開。レジ照合できないと、「詐欺で訴える」と返金の返金を求める模様。なお、レシートは発行していないので、paypayでの支払い以外レジ照合不可。完全に詐欺マフィン屋。 pic.twitter.com/5d7zhL0Qu2
— お侍さん (@ZanEngineer) November 28, 2023
証拠がなくレジ照合できなかった人は、詐欺として立件される可能性が浮上。デスマフィンから詐欺マフィンへ。 https://t.co/0eiXI7WsE3
— zapa (@zapa) November 28, 2023
・・・この騒動、いつ収束するの?
必ずしも悪ではない添加物
添加物に対して「カラダに悪いもの」「余計なもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、添加物=悪と考えるのは早計です。
たとえば、豆腐は「低カロリー」「ヘルシー」「やわらかくて歯に自信がない人でも食べやすい」などの良いイメージを持つ人が多数派の食品だと思います。しかし、実は、豆腐は添加物である「にがり」がないと作れない食品です。でも、豆腐に添加物が使われていると知って「豆腐はカラダに悪い」と思う人は少数派ですよね?
そもそも、日本国内で使用されている添加物は、厚生労働省や内閣府食品安全委員会がリスク評価をした上で「正しく使えば安全」と認めたものです。
「添加物」を必要以上に避けるより、ケースバイケースで「添加物」のお世話になりながら過ごす方が豊かで健康的な生活を送れると私は思っています。食品に限らず、化粧品やヘアケア商品にとっても同じだと思います。(防腐剤無添加のものは使用期限が短いので早く使い切らないといけませんよね!)
ちなみに、機械化が進んで人の手を介した作業が少ない工場のほうが、手作り(ハンドメイド)よりも、微生物によるリスクは低くなります。
まとめ:「無添加・手作りなら安全」はウソ?
「無添加は安心」を全否定するつもりはありませんが、「無添加であっても手放しでは安心できない」ことや「添加物を使っているものの方が衛生管理しやすい」ことを、デスマフィン事件は教えてくれました。健康に良いイメージが強い「無添加」や「オーガニック」を再度考える機会になりました。
もちろん、添加物がなくても、砂糖が少なくても、安全性が保たれていて美味しいお菓子はいくつもあります。マフィンであっても、保存料などの添加物を使わず作り、安全に提供しているお店がたくさんあります。真面目に取り組んでる個人菓子店もたくさんあります。
今回の騒動は「添加物がないから起きた」という単純な話ではなく、さまざまな原因が重複して起きた結果、健康被害につながったことを決して忘れてはいけません。
デスマフィン騒動は、販売店が閉業しており営業再開の目途は立っていないですが、何者かが無断で公式サイトに似せた虚偽のウェブサイトを勝手につくって公開し、あたかも「営業中」であるかのように振舞っているため、注意が必要です。くれぐれも偽サイトのお問い合わせフォームから個人情報を送らないようにしましょう!(正式な権利者の方が現在Googleに削除を申し立てているそうです)
これ以上の情報を載せることは、私がこの記事を書いた本来の目的から外れる(=店主の個人情報を晒す目的でこの記事を書いたわけではない)ため、ここではリコール情報へのリンクを貼るにとどめます。
責任者の名前(本名)や国籍、年齢、家族構成、学歴/経歴、顔写真などの情報は検索すればいくらでも出てきますので、興味のある方はどうぞご自身の責任の下、インターネット検索してください。その他の疑惑(デザイン盗作/補助金/協力金(コロナ給付金)不正受給/ツイステ[ディズニー]著作権侵害)についてもここでは詳しく触れません。
今回の件で体調を崩された皆様には、1日も早いご快復を心からお祈り申し上げます。きちんと補償などの救済措置がとられ、決して被害者の泣き寝入りにはなりませんように。。。
無添加のメリット/デメリットは、食品だけでなく、ヘアケア用品やスキンケア用品にも共通して言えることだと思いますので、メリット/デメリットをきちんと把握した上で商品選びができるよう、私たち消費者も賢く知識をつけて自分の身を守らねばいけませんね!