過去に【シャンプーの経皮毒】最近まで信じていた都市伝説というタイトルで投稿したところ、「『生理中は布ナプキンが良い』というくらいだからやっぱり経皮毒はあるんじゃないの?」との反応を頂戴したので、今日は「経粘膜吸収」について書いてみます。
(※「生理用品に含まれる高分子ポリマーが経血を吸収するときに化学反応が起こって有害物質が湧出するから危ない!」とかいう話ですが、この記事内ではどちらが正しくてどちらが間違っているかの結論は出しませんのでご了承の上お読みください)
(「製造販売を続けられているんだから安全性に問題がない」という人の意見も「経皮毒があるから天然素材由来のオーガニックの物しか使いたくない」という人の意見も両方尊重しますが、私自身は健康のために「疑わしきものは避ける」という姿勢があっても良い=使う/使わないは個人の自由!という立場です)
経粘膜吸収について
経粘膜吸収とは
「経粘膜吸収」とは、薬物や物質が体内に吸収される際の経路の一つで、粘膜を通して体内に吸収される方法を指します。粘膜は、消化器官、呼吸器官、口腔、鼻腔、直腸、膣などに存在する湿った組織であり、これらの粘膜を通じて物質が体内に取り込まれます。
そもそも粘膜とは
粘膜とは、体内のさまざまな内腔を覆う湿った薄い組織の層を指します。粘膜は外部環境と接する部位に多く存在し、体内への異物の侵入を防ぎ、同時に物質の吸収や分泌などの機能を持っています。
主な粘膜の部位
粘膜は体内のさまざまな場所に存在しており、それぞれが特定の役割を果たしています。
- 口腔粘膜
- 場所: 口の中全体
- 役割: 食べ物や飲み物の取り込み、味覚の感じ取り、消化の開始、病原体の防御など。
- 鼻粘膜
- 場所: 鼻腔内
- 役割: 吸い込まれた空気を加湿・加温し、病原体や異物をフィルタリングする。
- 消化管粘膜
- 場所: 食道から肛門までの消化管全体
- 役割: 消化液の分泌、栄養素の吸収、病原体の防御など。
- 気道粘膜
- 場所: 気管、気管支などの呼吸器系
- 役割: 空気の加湿・加温、異物の捕捉、排出の促進(粘液と繊毛の働きによる)。
- 直腸粘膜
- 場所: 直腸および肛門周辺
- 役割: 排便の調節、薬物の吸収(坐薬など)など。
- 膣粘膜
- 場所: 膣内
- 役割: 生殖器の保護、性交時の潤滑、出産時の道の確保など。
粘膜の特徴
- 湿潤性:
粘膜は常に湿っており、粘液や液体を分泌することで乾燥を防ぎます。 - バリア機能:
粘膜は外部からの異物や病原体の侵入を防ぐバリアとして機能します。また、免疫細胞が多く存在し、感染の防御に関与しています。 - 吸収と分泌:
粘膜は物質を吸収する能力があり、特に薬物や栄養素の吸収が行われます。同時に、粘液や消化液などを分泌して体の機能をサポートします。
粘膜の重要性
粘膜は体内に入る病原体や異物から保護するための最前線に位置しており、体の健康を維持する上で非常に重要な役割を果たします。また、粘膜の健康状態は全身の健康に影響を与えることがあります。
主な経粘膜吸収の種類
代表的な経粘膜吸収の例をいくつか列挙します。
- 経口粘膜吸収
- 舌下や口腔の粘膜を通じて、薬物や物質が吸収される方法です。舌下錠やバッカル錠がこの方法を利用しています。迅速に血流に入り、肝臓での初回通過効果を避けられるため、薬効が早く現れることが多いです。
- 経鼻粘膜吸収
- 鼻腔の粘膜を通じて吸収される方法です。鼻スプレーなどがこの方法を利用しています。 鼻腔内の毛細血管を通じて速やかに吸収され、脳への直接の影響も期待できる場合があります。
- 経直腸粘膜吸収
- 直腸の粘膜を通じて吸収される方法です。坐薬がこの方法を利用しています。経口投与が困難な場合や、肝臓での初回通過効果を避けたい場合に利用されます。
- 経膣粘膜吸収
- 膣内の粘膜を通じて薬物が吸収される方法です。膣錠や膣用クリームなどがこの方法を利用しています。女性特有の疾患治療に使用され、局所的な効果を高めることができます。
経粘膜吸収のメリットとデメリット
- メリット(利点):
- 迅速な吸収:
一部の薬物は、経口摂取よりも早く効果を発揮することができます。 - 初回通過効果の回避:
肝臓での初回通過効果を避けることで、薬の効果を高めることができます。 - 便利な投与方法:
経口投与が難しい患者(例: 吐き気がある患者や意識がない患者)にも適用できます。
- 迅速な吸収:
- デメリット(注意点):
- 局所刺激:
粘膜に対して刺激性がある薬物は、痛みや炎症を引き起こす可能性があります。 - 投与量の制御:
粘膜からの吸収速度が速いため、過剰投与に注意が必要です。
- 局所刺激:
性器は腕の内側の皮膚の42倍、吸収率が高い!
粘膜には角質層がないため、皮膚バリアーが効きません。
そのため、経粘膜吸収では、経皮吸収よりも遙かに有害化学物質を吸収しやすいです。
腕の内側の皮膚を1とした場合
- あたま:3.5
- ひたい:6
- あご:13
- せなか:17
- わきの下:3.6
- てのひら:0.83
- 性器:42
- かかと:0.14
角質層が厚い部位は吸収率が低く、角質層が薄い部位は吸収率が高い傾向にあります。最も吸収率が高い部位は性器です。
参考書籍:見てわかる!図解 経皮毒
妊娠中の女性の母体や胎児に対して書かれている部分が多いので、将来妊娠出産をライフプランに考えている人・妊娠中の人にぴったりの本だと思います。
頭ごなしに「絶対使っちゃダメ!」系の本ではないので、経皮毒性について知らない人も信じていない人も比較的抵抗なく読みやすい本ではないでしょうか。作者の体験を踏まえて分かりやすくまとめた本で、日用品に潜むリスクを認識するのには良い本だと思います。イラストや図解を見て直感的に情報を得るだけでも◎(活字部分も結構多いです!)ただ、実験データや論文による根拠ばかりではないので、理論から入りたい人向きではないかもしれません。
売って儲ける側よりも消費者側の目線で書かれている印象を持ちました。普段お使いの生活用品を変えるか変えないかは別として、意識の違いはかなり生まれると思います。一読の価値ありです!
映像や音声での説明の方が理解しやすい人にはDVD付きバージョンもあります。
併せて読みたい①:伝えて!ひろがれ!脱・経皮毒
先にご紹介した「見てわかる!図解 経皮毒」の著者・山下玲夜さんの本です。こちらは「安全と思って使っていても実はそうでないものもある。でも、それらを使わないと生活に支障がでてしまう。どうしたらいいの?」という視点で書かれています。
生活用品や化粧品など、物品の種類別にまとめられていて、分かりやすいです。たとえば化粧品なら、「化粧水」「乳液」「ファンデーション」「口紅」とアイテム別に分かれています。興味のあるものや自分にとって使用頻度が高い物から読んでもいいかもしれません。一部食品について触れられている部分もあります。
併せて読みたい②:生活用品の危険度調べました
大手インターネット通販サイトでは中古本しか見つかりませんでしたが、こちらも興味深い。「危険度別 注意すべき成分一覧」のように危険度の大きさが分かるコンテンツが良いです。
「PART 3 子ども&赤ちゃん用品の危険度」では次の物品について言及されています。ベビーシャンプー/子ども用日焼け止め/子ども用歯磨き粉/ベビーソープ/ベビーローション/お尻ふき/ほ乳瓶用洗剤
赤ちゃんの肌は無防備。敏感で全身から吸収しやすいことや成長段階で身体に取り入れたものの影響の大きさを考えると、大人の対策とは分けて特別に学ぶ必要がありそうです。
この本以外でも「危険度調べました」シリーズは大変充実していて勉強になります。
経粘膜吸収と経皮毒の違い
「経粘膜吸収」と「経皮毒」は、どちらも体外から物質が体内に取り込まれる過程に関する概念ですが、その内容と目的には大きな違いがあります。
経粘膜吸収
- 概要:
経粘膜吸収は、薬物やその他の物質が体内に吸収される一つの経路で、特定の部位に存在する粘膜を介して行われます。粘膜とは、口腔、鼻腔、消化管、直腸、膣などの内側を覆う湿った組織のことです。 - 使用例:
- 舌下錠: 舌の下に置いて溶けた薬が口腔粘膜から吸収される。
- 鼻スプレー: 鼻腔粘膜から薬が吸収される。
- 坐薬: 直腸粘膜を通じて薬が吸収される。
- 目的:
主に医療目的で、薬効を迅速に発揮させる、初回通過効果を避ける、局所的な効果を狙うなどが理由です。
経皮毒
「経皮毒」は学術用語ではありませんが、とてもよく似た言葉で「経皮毒性」という学術用語があります。経皮毒性は、皮膚に適用した試験という意味で用いられます。1
「経皮毒」と「経皮毒性」。すごく似ていますよね。おかげで「経皮毒」があたかも学術用語であるかのように認識されました。そして、学術用語だと勘違いされたおかげで、権威を得ることができました。
以下は、「経皮毒」は学術用語ではないことを理解した前提で、敢えて「経皮毒」という呼び名で書かせていただきます。
- 概要:
経皮毒は、皮膚を通じて体内に吸収される有害物質を指す概念です(※繰り返しますが「経皮毒」は学術用語ではありません)。経皮毒は主に「化粧品、洗剤、農薬などに含まれる化学物質が皮膚から吸収され、それが体内に蓄積されることによって健康に悪影響を与える」という考えに基づいています。 - 使用例:
- 化粧品: 一部の化粧品に含まれる防腐剤や合成香料が皮膚から吸収され、体内で毒性を示す可能性があると懸念されています。
- 日用品: 洗剤などに含まれる化学物質が皮膚から吸収されることが指摘されています。
- 化粧品: 一部の化粧品に含まれる防腐剤や合成香料が皮膚から吸収され、体内で毒性を示す可能性があると懸念されています。
- 目的:
健康被害を回避するために、経皮毒のリスクを認識し、可能な限り有害物質を避ける。
ちなみに…
「経皮毒は危険」とする情報には科学的根拠はない
平成20年(2008年)、「経皮毒」の危険性を主張して販売行為を行っていた業者に対して、経済産業省が3ヶ月間の業務停止命令を出しています。
この処分の対象となった違反行為の中には、科学的根拠がないにもかかわらず、化学物質の有害性と他社商品の危険性を過度に強調して不安を煽り、自社商品の購買へ誘導した行為が挙げられていました。
(2)同社の勧誘者は、他社の製品は有害で同社の製品のみが安全であるという事実がないにもかわらず「経皮毒という言葉を知っているか。皮膚を通じて体内にたまる毒のことで、市販の台所用洗剤に含まれている」「一般に市販されている洗剤メーカーなどの商品を使っていると将来私たちは癌になる」「同社の商品はすべてナチュラル成分でできていて、化学物質を使っていない」等と告げたり、経皮毒の健康被害について説明するビデオやDVDを見せて、あたかも同社の製品のみが安全であるかのように告げたり 「同社の商品でアトピーが治る 」等と告げたりするなど、商品の品質、効能について不実のことを告げて勧誘を行っていました。
引用元:経済産業省「特定商取引法違反の連鎖販売業者に対する業務停止命令について」
この決定は「経皮毒には、市販商品の安全性を否定する科学的根拠はない」という国の立場を明確に示したものだと言えそうです。
まとめ:経粘膜吸収と経皮毒の違い
- 吸収経路の対象部位:
- 経粘膜吸収: 粘膜(口腔、鼻腔、直腸、膣など)を通じての吸収。
- 経皮毒: 皮膚を通じての吸収。
- 目的:
- 経粘膜吸収: 主に薬物の有効成分を吸収させるための医療的な目的。
- 経皮毒: 皮膚から無意識に吸収される有害物質のリスクに関する概念。
まとめ
デリケートゾーンからの吸収に警戒
文中で書籍「見てわかる!図解 経皮毒」を引用して、吸収率が1番高いのが、性器であることをご紹介しました。性器からの吸収率がとても高くて、二の腕の内側の皮膚を1とした場合、膣粘膜の吸収率はなんと42倍にもなるそうです。
米国食品医薬品局(FDA)も「生理用ナプキンやタンポンから体内に吸収されたダイオキシンは、子宮内膜症や卵巣がん、子宮体がん、リンパ悪性腫瘍を引き起こす恐れがある」と言っています。
教えてもらって初めて知ったのですが、諸外国の生理用品と比較してみると、日本の生理用品の白さは異常なほど際立つそうです。なぜなら、日本では薬機法の都合で「白くないといけない」から。1「薬剤で漂白処理された生理用品を使ってたんだ…」と気づくと途端に恐ろしくなりますよね。。。
ちなみに「(安全性の有無はよく分からないけど)疑わしきものは避けたい」という意識から、最近の私は「吸水ショーツ」を愛用しています。2
わたしのお気に入りアイテム
- 高密度撥水素材で、ショーツから水分が漏れないようにガード
- 重流量吸収18MLの液体吸収でキャッチ
- 消臭加工で気になるにおいをブロック
- 透湿防水フィルムで、水分の染み出しを防止
- 水蒸気や湿気を逃して蒸れにくさをキープ
- シームレス仕様で縫い目がないためボトムスに響かない
- 日本で製造販売される生理用品は、改正医薬品医療機器法(薬機法)や厚生労働省が定める「生理処理用品製造販売承認基準」の規制を受けています。承認を得るためには、基準を満たす必要があるのですが、この基準には、生理用品は「白色」「においがほとんどなく、異物を含まない」などの記載があるのです。高分子吸収材を使わない&漂白しないで生理用品を作ることは並大抵の努力では実現できないため、 ↩︎
- 吸水ショーツは、薬機法上の”生理用品”には該当しないため、「経血を吸収」などの直接的な広告表現はできない&「ナプキンを使わず着用可能」などの表現もグレーゾーンのため、単に「愛用している」という表現にとどめ、商品紹介のコーナーでも「生理/月経」「経血」などの言及を避けました。ご了承ください。 ↩︎